エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「透佳くんへの気持ちが、子どもの頃のまま、なかなか切り替えられなくて」

私の中で彼は、いじめっ子少年のまま。恐怖心や苦手意識が抜けるまで時間がかかった。

「正直今も、どうして私を選んでくれたのか、さっぱりわからないんですが――」

透佳くんほどの男性なら、素敵な女性が他にいくらでもいるだろうに。

本当に私でいいの? と逆に問いただしたいくらいだ。

とはいえ、やっぱり別の女性がいいなんて言われても困ってしまう。

私はこのまま、透佳くんと一緒にいたいのだから。

「この一カ月、透佳くんのそばにいさせてもらって、幸せだったのは事実なので」

私はいつの間にか、透佳くんのことを好きになってしまっていたのかもしれない。

これは恋だろうか。それとも愛?

透佳くんの隣にいて、居心地がいいと感じるこの想いは。

「あの婚姻届けの右側に、私の名前を書いてもいいですか?」

私の言葉に、透佳くんの身体がぴくりと反応する。

ふたり、ゆっくりと顔を上げ目を合わせる。お互い、嬉しいような、困ったような、複雑な顔をしていた。
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