エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「透佳くん……?」

「彩葉」

彼は私の体を、ふらふらと道の脇へと押しやると、大きな木の陰に隠れるかのように身をひそめた。

「当たり前だろ。そのために、お前に婚姻届けを託したんだから」

甘い声でそう囁いて、そっと私に顔を近づける。

その仕草の意味を理解して、私は目を閉じ、唇を差し出した。

私の唇にぴったりと吸いついてくる彼。その動きは愛していると言ってくれているよう。

私も求めに従って、精一杯愛情を表現する。

なんて柔らかくて気持ちがいいのだろう、彼とのキスは。

ゆっくりと唇を離し目を開けると、彼はうっとりとした瞳で私を見つめていた。

「夫婦になろう。彩葉」

「……はい」

再び目を閉じ、唇を重ね合わせる。

幸せすぎて、何度でも交わしてしまいたくなるキス。

この世界がふたりきりで、ここが外でなかったら、きっと永遠に唇を重ね続けていただろう。

もしかして、これが愛なのだろうか。

愛おしいと思うこと。独占してしまいたくなること。この時間が、永遠に続いて欲しいと願うこと。

まだ結婚なんてよくわからない、愛なんてわからない、そう感じていた私だったけれど。

生まれて初めて抱いたこの感情は、きっと愛と呼んで差し支えないものだろう。

私は彼を、愛している。
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