エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
約束の場所は、ひとりで中に入るのが躊躇われるほどの高級フレンチレストランだった。
 
意を決して足を踏み入れ、フロントで名前を告げると、どうやらすでに沢渡先生が待っているらしく、奥の個室へと案内された。

部屋に入って、うっと足を止める。

広々とした室内。本来は六席ある部屋なのだろう、壁際にテーブルが等間隔に配置されているが、そのどれも無人。

代わりに、中央に四人がけの大きなテーブルが置かれていた。

向かって右側に座っているのは沢渡先生だ。

正面に座っていたのは、見たこともない初老の男性。

そして、左側に座っているのは……美沙さん?

沢渡先生だけが来るものだとばかり思っていたのに、他にふたりもいて、しかもそのうちひとりは知らない男性で。わけもわからず慌ててしまった。

三人が椅子から立ち上がる。私は沢渡先生に視線で助けを求めた。

「先生……これは……」

「驚かせて悪い。本当は、須皇先生のお気に入りであるあんたに、ちょっかいかけてみようかなーなんて、ささやかな悪戯心だったんだけど。思った以上に事態がこじれた」

彼は苦い顔で私のもとにやってくる。

私の背中に手を添えて前に押し出しながら、ひとりずつ紹介してくれた。

「あれが俺の父親。帝央大学医学部附属病院の心臓血管外科で教授をやっている。あっちは姉の美沙。姉とは、会ったことがあるだろう?」
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