エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
美沙さんが小さく一礼する。その表情はまるでお葬式のようで、先日お会いしたときの快活さは微塵も感じられなかった。

沢渡先生のお父さま――沢渡教授は、ダブルのスーツを着た恰幅のいい男性だった。白髪交じりで、その顔には深い皺が刻まれている。おそらく、歳は六十前後といったところだろう。

「初めまして、早風彩葉さん。突然お呼びたてして申し訳ない」

教授は、私のフルネームまでしっかりご存知のようだ。

慌てて頭を下げて挨拶する。座ってくださいと促され、ひとまず席についた。

食事が来るまでの間、ざっと自己紹介をさせてもらった。早風彩葉、二十六歳。IT企業勤務。

教授は、私のことを『須皇先生の婚約者』として認知しているようなので、彼との馴れ初めをざっと説明させてもらった。

幼い頃から家族ぐるみで付き合いがあり、その流れで婚約に至りましたと、そんな感じに。

代わりに教授は、ご自身と透佳くんの接点を教えてくれた。
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