エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「須皇先生のお噂はかねがね。アメリカでの経歴も実に華々しい。一度、うちの大学病院にお招きしたいと願い出たんだが、残念ながら叶わなかった。彼がいれば、うちの心臓血管外科は業界トップクラスになるだろう。なにしろ彼は、心臓移植手術に立ち会った経験があるからな」

「心臓……移植?」

そういえば透佳くんは以前、心臓移植の記録を読んでいたっけ。アメリカでお世話になっていた教授が送ってくれたとかいう……。

私に医学的知識がないことを知っている沢渡先生は、丁寧に解説をしてくれる。

「日本で心臓移植が可能な病院は数える程度しかない。うちの大学病院も、循環器疾患を専門としている須皇総合病院ですら無理だ。高い技術力が必要で、設備も人材も揃えるのが難しい」

「だが、須皇先生は実績をすでにお持ちだ。アメリカでは、心臓移植に関する臨床をしていたと聞く」

興奮気味に教授はまくしたてる。透佳くんの経歴が、そんなにも教授にとって魅力的に映るものだったなんて。

でも本人は、執刀ではなく助手だと謙遜していたけれど。

「透佳くんは助手と言っていましたが……」

「彼の年齢からすれば当然のことだ。だが、助手として立ち会ったことがあるというだけで、とんでもなく希少価値のあることなのだよ。うちのボンクラ息子と違って」
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