エリート外科医の滴る愛妻欲～旦那様は今夜も愛を注ぎたい～

突然、批判を浴びた沢渡先生は、ムッと顔をしかめた。

けれど、反論はしないようだ。教授の言っていることが正しいのか、あるいは……。

「彼という素材を獲得できれば、うちの大学病院でも心臓移植チーム設立が夢ではなくなる。彼だって、地味な症例を積み上げるより、デカい功績を上げたいだろう！」

透佳くんは、日々の臨床を地味だなんて思ってはいないと思うけれど。

しかし、心臓移植という分野に興味があることは確かだろう。

透佳くんが日本に戻ってきてまで、どうして心臓移植の記録を読んでいたのか。

『今は、まだ』対処できないと言っていた。もしかしたら、透佳くんは自分の力でいずれ実現したいと考えているのかもしれない。父から受け継ぐ須皇総合病院で。

「……私にはよくわかりません。はっきりと聞いたわけではありませんので」

素人の私が透佳くんの仕事に口を出すのは反則だと思っている。私から教授に話せることはなにもない。