エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
ぼんやりした返答を繰り返していると、おもむろに教授が話を変えた。

「ところで、須皇先生には弟さんがいるそうだな。彼もアメリカで医学を学んでいるとか」

「はい……そう聞いていますが……」

「つまり、須皇総合病院の跡を継ぐなら、弟さんでもいいわけだ」

パチパチと目を瞬いた。なんて突拍子もないことを私に聞くのだろう。 

「私には、答えられません……」

教授の真意が読み取れない。困惑する私に、沢渡先生がわかりやすく説明してくれる。

「つまり、親父はこう言っている。うちで心臓移植専門のチームを作ってほしい。須皇先生をうちの大学病院に招聘したいんだ」

「それは……」

思わずごくりと息を呑む。

そもそも透佳くんは、お父さまの跡を継ぐために日本に戻ってきたのだ。いくら弟さんがいるとはいえ、別の病院のお誘いに応じるとは考えにくい。

大体、一度断られたと言っていたじゃないか。

そんなことを私に相談されても、困ってしまう。

「……どうして私に、そんな話を?」

「君が邪魔だからに決まっているじゃないか」

沢渡先生にあけすけに言われ、言葉を失う。

亮二(りょうじ)
< 201 / 259 >

この作品をシェア

pagetop