エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
私の背中を押して、建物の裏手にある駐車場まで案内してくれた。

外気は湿り気を帯びていて生温い。もうすぐ梅雨だ。透佳くんと再会して、いつの間にか三カ月が経っていた。

短いようで長くて、密度の濃すぎる三カ月だった。

気が抜けたのか、ボロボロと涙がこぼれ落ちてくる。

「泣くなよ。って、仕方がないか。あーあ……」

どうやら沢渡先生は、女性を慰めるのがあまりうまくないらしい。うんざりするような声をあげて、でも私の肩をしっかりと抱いて、車へと連れていってくれる。

沢渡先生の車は、スポーツカーみたいな形をした、ちょぴり派手な高級車だった。

私を助手席に座らせると、運転席に乗り込み、ナビをいじり始める。

「あんたの家、どこ? 病院の近くだよね」

ざっと道を説明する。大通り沿いだから伝えるのは簡単だ。

彼はなんとなくわかったようで車を走らせた。

「なぁ。あんたさ、いつ須皇先生と婚約したの?」

さりげない質問に傷口を抉られて、悲しみが増す。だが、隠す必要もないし、素直に答えた。

「プロポーズされたのは、三月の頭くらいだったと思います」

「……丸三カ月か」
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