エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
手を借りて車を降りた私は、マンションの正面玄関に向かってとぼとぼと歩みを進めた。

「……私は、この先どうしたら……」

「どうって……別れるしかないだろ」

沢渡先生は正直な人だけれど、そのせいかどうもデリカシーに欠ける。容赦ない答えを突きつけられ、余計に落ち込んだ。

「別にいいじゃん。男なんていくらでもいるんだし。まぁ、あそこまでハイスペックはなかなかいないかもしれないけれど。何? 医者がいいの?」

そういうことじゃないとぶるぶる首を横に振る。かといって、情緒的な説明をしたところでこの人には伝わらなそうだ。

「フリーの医者仲間、紹介してやろうか?」

「……いいです」

「男の傷を癒すのは男だとかいうだろ」

「そんな気分じゃないんです……」

「ノリ悪いなぁ」

悪態をつきながら、私の肩に手を回す。

あまりにも馴れ馴れしく肩を抱かれたものだから、驚いて沢渡先生を見上げた。

彼は、にんまりと笑みをこぼしながらこちらに顔を近づけて、いたずらっぽく囁く。

「なんなら俺も、フリーだけど。遊んでみる?」

「は?」

意味がわからず、目を丸くして彼を見つめると。

「実はあんたの事、少し気になってた。須皇先生を落としたテクニック、見てみたくて」
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