エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
おもむろに眼鏡を外し、不敵な眼差しで私を睨んだあと。
すかさず彼が、私の唇に自分のを重ねた。
先が触れ合う程度の、ごく軽い口づけ。チュッという甘い音を鳴らし、余韻も感じさせぬまま遠ざかっていく。
「――っ」
文句を言う前に体が動いて、咄嗟に彼を突き飛ばした。反動でこっちまでよろよろと後ずさりながらも、奪われた唇を押さえる。
今、私にキスを……。
事態を飲み込むと同時に、顔が赤く染まる。
恥ずかしさと、こんなことを許してしまった自分の警戒心のなさに呆れ果てて。
「なん……で、こんな……」
ひどい罪を犯してしまったような気分だ。私は透佳くんの婚約者なのに。
いずれ破談になる関係だとしても、今はまだ、この身は彼のもの。
罪悪感に苛まれながら、手の甲でゴシゴシと唇を拭っていると。
正面玄関に向かって、一台の車が勢いよく走り込んできた。眩しいライトに照らされ、目がくらむ。
車は、入口付近に停めてあった沢渡先生の車を追い越して、正面玄関のすぐ脇、車が乗り入れられるギリギリに急停車した。
運転席から降りてきたのは――。
「……彩葉――!」
彼の姿を目にして、背筋が凍る。どうして? まだ帰ってくる時間じゃ……。
焦る私とは裏腹に、沢渡先生がニタリと笑った。
「おかえりなさい。須皇先生」
すかさず彼が、私の唇に自分のを重ねた。
先が触れ合う程度の、ごく軽い口づけ。チュッという甘い音を鳴らし、余韻も感じさせぬまま遠ざかっていく。
「――っ」
文句を言う前に体が動いて、咄嗟に彼を突き飛ばした。反動でこっちまでよろよろと後ずさりながらも、奪われた唇を押さえる。
今、私にキスを……。
事態を飲み込むと同時に、顔が赤く染まる。
恥ずかしさと、こんなことを許してしまった自分の警戒心のなさに呆れ果てて。
「なん……で、こんな……」
ひどい罪を犯してしまったような気分だ。私は透佳くんの婚約者なのに。
いずれ破談になる関係だとしても、今はまだ、この身は彼のもの。
罪悪感に苛まれながら、手の甲でゴシゴシと唇を拭っていると。
正面玄関に向かって、一台の車が勢いよく走り込んできた。眩しいライトに照らされ、目がくらむ。
車は、入口付近に停めてあった沢渡先生の車を追い越して、正面玄関のすぐ脇、車が乗り入れられるギリギリに急停車した。
運転席から降りてきたのは――。
「……彩葉――!」
彼の姿を目にして、背筋が凍る。どうして? まだ帰ってくる時間じゃ……。
焦る私とは裏腹に、沢渡先生がニタリと笑った。
「おかえりなさい。須皇先生」