エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
ミルの音が止む頃、遠くでドアの閉まる音がした。透佳くんが車を停めて帰ってきたらしい。

リビングに顔を出した透佳くんは、せっせとコーヒーを淹れている私を見て、胡乱気に目を細める。

「……どういう気の回し方だ?」

「い、いえ、特にそういうんじゃ……。夕食は食べましたか?」

いらないと言うので、コーヒーとフルーツタルトを用意して、ローテーブルに置いた。

彼はジャケットを脱ぎに自室へ向かったみたいだ。しばらくすると、シャツとスラックス姿になって戻ってきて、ソファに腰を下ろした。

「いただきます」

「召し上がれ」

私も隣に座り、フルーツタルトをいただく。味なんか感じない。しばらくふたりで無言のまま咀嚼する。

「……わけを聞かない方がいいのか?」

私と目を合わせぬまま、ぽつりと透佳くんが呟いた。

友人と食事に行くなんて嘘をついたことは明白だ。

それでも私を責めないのは、信じてくれているのだろうか?

それとも……なかったことにしようとしている?

「……いえ。聞いてください」
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