エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
このまま腫れものに触るような扱いをされるほうがもっとつらい。

いっそのこと、はっきりさせたほうがいい。

「なら聞く。どうして、沢渡と一緒にいた?」

透佳くんがストレートに尋ねてくる。

本当の理由が言えない今、私はこう答えることしかできない。

「……浮気してました。別れてください」

目を見て告げることができず、深くうつむいた。膝の上の手を強く握りしめる。

怒るだろうか。罵られる? それとも呆れられるかな?

こういうとき、透佳くんはどんな反応をするのだろう。

びくびくしながら待っていると、やがて、はぁ、というため息が聞こえてきた。

「お前は本当に、嘘が下手だな」

え!? と驚いて透佳くんを見上げる。

どうして嘘だってわかっちゃったのだろう。変な顔してた? 目が泳いでた?

とはいえ、ここまできて今さら前言を撤回することなんてできなくて。

「嘘なんかじゃ……ありません……私、浮気したんです!」

彼の胸にすがりつくと、逆に抱きしめ返されてしまった。

怒られるはずだったのに、嫌われても文句は言えないのに、あまりに優しく抱擁されて動揺する。

「どうして自分を貶めるようなことを言うんだ」
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