エリート外科医の滴る愛妻欲～旦那様は今夜も愛を注ぎたい～

権蔵さんの身体のことを心配している人もいれば、終電帰宅が続くこの状況で、これ以上戦力が減るのかと落胆している人もいるようだ。

「こんなときに……」という悪態が聞こえてきて、カチンときた。

しかし、ここで喧嘩をしたところで権蔵さんが元気になるわけでもない。仕方なく、怒りをゴクンと飲み込む。

「あの、千葉さん。権蔵さんはなんの病気なんでしょうか」

尋ねると、千葉さんはこちらに向き直り、言いづらそうに口を開いた。

「心筋梗塞だそうだ。調布のほうにある須皇総合病院ってところで手術している」

須皇総合病院って、透佳くんの病院じゃないか。

その近辺で心臓を専門とする病院といえばそこが一番有名だから、救急搬送先に選ばれたのかもしれない。

透佳くんに聞けば、何かわかるかもしれない……そう考えた私は、無意識のうちに携帯端末を握りしめていた。

良家顔合わせの日から一週間。なんの連絡もせずに、いきなりこんなことを聞いたら変に思われるかもしれないけれど……。