エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
『透佳くんの病院で、加藤権蔵さんという方が心筋梗塞で手術していると思います。もし具合がわかったら教えてくれませんか。私の上司なんです』

そうメールに打ち込んで、もらったばかりのアドレスに送ってみる。

彼への初メール。とりあえず、エラーで返ってこなかったことに安心する。アドレスは合っているみたい。

彼は返事をくれるだろうか……。

そわそわとしながら待つけれど、なかなか返事をもらえないまま、気がつけば夜になっていた。

連絡がきたのはその日の夜更け。もはや翌日と言ってもいい時間だった。

ちょうど私が地元の駅から家に向かって歩いている途中、携帯端末が鳴動した。

着信だ。まさかメールに対して電話が返ってくるとは思っておらず、困惑する。

「は、はい、彩葉です!」

慌てて通話ボタンをタップすると、おそらく通りを走る車の音が聞こえたのだろう、透佳くんは訝し気な声をあげた。

『こんな時間にどこにいるんだ?』

「今、帰宅中で」

『はぁ!? もうすぐ二十四時だぞ……!』

文句を言うものの、私の会社の前で待ち伏せした日のことを思い出したのだろう。

『ああ、お前の会社はそういう会社だったな』

どこか諦めたように納得してくれた。
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