エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
『……要するに、患者にとって最も負担の少ない切開方法で手術ができたってことだ。成功したから安心しろ。現在はCCU(冠疾患集中治療室)で治療を受けている』

「よ、よかった……」

つまり、権蔵さんは大丈夫ってことだ。大きく息をついて胸を撫で下ろす。

「もしかして、透佳くんが手術してくれたんですか……?」

『ああ。俺の専門分野だったから』

淡々とした声でいう。

つまり、権蔵さんの命の恩人ってことだ。

あの細く長い綺麗な指で、止まりかけた心臓に再び命を吹き込んでくれたのだ。

心臓外科医ってすごい仕事なんだなと、その偉大さをあらためて実感した。

「権蔵さんを助けてくれて、ありがとうございます」

思わず道の真ん中に立ち止まって、深々と頭を下げる。

彼は、さも当然のように『ああ』と短く答えた。

こういうときこそ、いつもみたいに偉そうにしてくれてもかまわないのに。どうして今日に限って謙虚なのだろう。

やがて彼はフッと吐息を漏らし『お前に感謝されるのは悪くないな』と満足そうに呟いた。
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