エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「入院期間は、どれくらいになりそうですか? 一度お見舞いに行こうと思うんですが……」

『予定としては十日だ。容体次第ではあるが。見舞いに来るなら連絡しろ。病室まで案内してやる』

そんな親切をかって出てくれるとは思わず、驚いて目を丸くする。

「わかりました。ありがとうございます」

通話を終えようとアイコンをタップしかけたところで『彩葉』と呼び止める声が聞こえて、慌てて受話口を耳に当て直した。

『危ないから、家につくまでこのままにしておけ』

夜のひとり歩きを心配してくれているのだろうか、彼がそんなことを言い出す。

「大丈夫ですよ、いつものことですし。すぐ近くですから」

『いいから。電話していれば、多少の防犯にはなるだろう』

意外と心配症なのだろうか。仕方なく、彼の言う通りにして通話を続ける。

とはいえ、用事が済んでしまったら、他に話すことはない。

気まずい沈黙が続いたあと、彼がぽつりと切り出した。

『こういうとき、俺がもしごく普通のサラリーマンだったら、お前を家まで送り届けてやれるんだろうな』

なんだかまるで、医者であることを悔やむようなセリフ。彼らしくなくて耳を疑う。
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