エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「ありがとうございました。失礼します」

まるでお仕事の電話のように、業務的にお別れを告げると。

『おやすみ、彩葉』

逆に親しみのある言葉で返され、硬直する。

まるで本物の恋人か家族のようだ。彼とおやすみを言い合うことが、妙に新鮮に感じられる。

「……おやすみなさい、透佳くん」

言葉にしてみると不思議なもので、なんだか優しい気持ちになれた。

それだけで、たいして楽しくもなかった一日が、パッと華やいだ気がした。

プツリと電話が切れる。途端にひとりが寂しく感じられて、マンションの階段を駆けあがった。

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