エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
恥ずかしくて小っちゃくなっていると、不意に権蔵さんが遠くを見つめるような目をした。

相変わらず朗らかな顔で、でも声には少しだけ真剣味を織り交ぜて、ぽつぽつと語り出す。

「だが、結婚が決まっているなら、ちゃんと考えないといけないな」

「考えるって……」

「転職だよ。うちの会社じゃ、結婚も子育ても難しい。あんなに素敵な旦那さんがいるなら、家庭を大事にしないとな。毎日終電じゃ、マズいだろ。せめて、産休、育休制度の整った会社でないと」

ドキリとしてうつむく。いつか直面する問題だとは思っていたから。

結婚して子どもを産みたいと考えるなら、今のままではいけない。

まだ大丈夫、まだ大丈夫と、つい先送りにしてきたけれど。

「……会社にも、雇ってもらった恩がありますし」

「そんな恩、これまでの働きで充分返しただろう。いつまでもうちの会社の歯車になる必要はない。これからはちゃんと自分の人生を考えないと」

仕事でミスをしてしまった時でさえ、笑って許してくれた権蔵さんに、初めて真剣に叱られたような気がして、きゅっと唇をかみしめる。
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