エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「こんな小さなマンションに住んでいるだなんて、透佳くんに見られたら恥ずかしいわ……」

考えてみればこの家になってから透佳くんが来るのは初めてだ。

七十平米の3LDKに、両親と私の三人暮らし。

ベッドタウンでこの大きさは、決して狭くはないと思うのだけれど、なにしろ相手は大病院のご子息だ。価値観がまるで違う。 

「待ち合わせ場所、駅にしようか?」

「ううん、いつかはバレることだもの。隠したって仕方ないわ」

それもそうだ。うちのマンションを見て幻滅するような人ならそれまで。私とは住む次元が違うのだと諦めるしかない。

約束の十四時。玄関のチャイムが鳴った。

私がドアを開けると、そこには両家の挨拶のときよりもカジュアルダウンした透佳くんが立っていた。

ネイビーのストライプジャケットに、ブラックのスラックス。インナーにはシンプルかつ上質な白いシャツ。

気取らないけれどフォーマルにも見える、洗練された着こなしだ。

私の後ろでそわそわとしている母に向かって、外面いいモードでにっこりと会釈した。
< 55 / 259 >

この作品をシェア

pagetop