エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
彼は車を発進させるが、目的地はまだ教えてくれない。とりあえず、黙ってついていくことにする。

標識を見る限り、都心に向かっているようだ。

「あんなマンションに住んでいると知って、幻滅しませんでしたか……?」

恐る恐る尋ねてみるが、彼はさして気にしていない様子だ。

「今後、お前が家を出ることを考えると、あのくらいでちょうどいいんじゃないのか。広すぎても管理が大変だろう」

もう私が家を出ることになってる……! 彼の中で結婚計画が着々と進行している。

「透佳くんは、今、ひとり暮らしなんですよね……?」

確か、病院の近くにマンションを借りていると言っていた。しかし、なぜか彼はかぶりを振る。

「だが、あそこは俺たちの新居にするには狭すぎるから、もう少し広い場所を買った。立地は譲歩してくれ、病院の近くでなければ困るんだ。お前の職場からもそう遠くはないはずだから不便はないと思う」

「……え?」

スラスラと彼の口から飛び出してきた説明に、目を白黒させる。

今、新居を、買ったって言った?

「……もう、買っちゃったんですか……?」

「ちょうどいい新築物件があったんだ。もたもたしていたら、他の客に誓約されてしまうだろ?」

呆然として目を見開く。まだ婚約もOKしていないのに、新居が決まっちゃうってどういうこと……?

あまりにも横暴で、反論する余地もない。
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