エリート外科医の滴る愛妻欲～旦那様は今夜も愛を注ぎたい～

上層部は権蔵さんが休んだから悪いというけれど、それは違う。

リスクマネジメントのミスだ。誰かひとりが倒れた程度で破綻するプロジェクト構造は、そもそも間違っているのだ。

ちゃんとした会社であれば、負荷を分散しているはずだし、誰がやってもわかるように手順化されているもの。

時間と手間を惜しんで突貫工事を続けてきたしわ寄せが、今私たちに圧し掛かっている。

協力をかって出たものの、先の見通しが立たず、精神的にも追い詰められることになった。

帰宅時間が終電なのは変わらないとして、少ない睡眠時間に精神的な不安も加わり、なかなか寝付けない日々が続いた。

疲れていたなぁとは自覚している。食事もあまり食べられないくらいに。

ぼうっとできる時間は電車の中くらいしかなくて、今この電車の進む先が会社なのか、家なのか、わからなくなるくらいに頭が真っ白になることがあった。

権蔵さんの、転職の勧めが脳裏をよぎる。

――これからはちゃんと自分の人生を考えないと――