エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
その間に、母は透佳くんを迎えに玄関へ。

母と透佳くんの談笑する声。玄関から近づいてきた足音が私の部屋の前を通り過ぎ、リビングへ向かう。会話に父の声も加わった。

私はひと足遅れて、乱れた髪を必死に撫でつけながらリビングに顔を出した。

「と、透佳くん、いらっしゃい……」

すると、リビングのローテーブルに父と向かい合って座っていた透佳くんが、こちらを見てひと言。

「なんだ。彩葉。寝てたのか」

即座にバレて凍り付いた。

母が嘆かわしげな顔で、私の服を指差す。洗面所に行き鏡で確認すると……あ、表裏が逆……。

慌てて気直してリビングへ戻ると、母は取り繕うようにホホホと笑ってお茶を出していた。

「ここのところ、休みがなくて、睡眠不足だったのよね?」

母、ナイスフォロー。私は「そ、そうなんです……」と苦笑いを浮かべる。

でも、忙しい忙しくないに関わらず、洋服表裏逆は恥ずかしい……。

「……その会社、大丈夫なのか? 加藤さんからも、ずいぶんブラックな企業だって話を聞いたぞ?」

どうやら権蔵さんと会社の話をしたらしい。

もしかしたら、今後の社会復帰や通院に向けて主治医である透佳くんに相談したのかもしれない。
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