エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「……勉学にかまけて彩葉さんのことをおざなりにしていたことを、とても心苦しく思っておりました」

「そんなことないのよ、お父さまの跡を継いでお医者さまになるだなんて、偉大なことだわ」

「これで実家も安泰だな。君の親父さんも喜んでいることだろう」

彼の父親は須皇総合病院の医院長。

そこの心臓血管外科といえば有名で、手術数も日本トップクラス、難しい症例の処置も多く行われる。

彼はいずれ父親の跡を継ぐべく、そこで働いているという。

「彩葉のお父さん、お母さん、こんな私ではありますが、どうか娘さんを任せていただきたい」

深々と一礼した彼を見て、両親は固唾を呑む。

「……でも、いいのかい、透佳くん」

おずおずと切り出す父。申し訳なさそうに声を低くした。

「うちはもう、大規模な医療機器メーカーではない。経営規模も大幅に縮小してしまった。当時は、うちの娘と結婚するメリットもあったかもしれないが、今ではほとんど――」

「勘違いなさらないでください。私は純粋に、彩葉さんと一緒になりたいだけです」

彼は父の声を遮るように強い眼差しを向ける。
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