エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
一週間分の荷物を詰め込んだボストンバッグふたつを後部座席に乗せて、私たちは新居へ車を走らせた。

「確かに、ここ二週間でやつれたよな」

信号の合間に、透佳くんは私の頬に手を伸ばして、まじまじと見つめる。

「……大丈夫ですよ、すぐ戻りますから」

状況が落ち着いて、普通にご飯を食べるようになれば、すぐに元の体重に戻るはず。

ただ、疲労はしっかりと蓄積している自覚があり、荷物を纏めるだけでハァハァと息が上がってしまった。

もしかしたら、運動不足かも。仕事中も座ってばかりだし。

そういえば、マンションに住人向けのジムがあったはず。こまめに通えば体力もつくかもしれない。

「……マンションのジムを使わせてもらって、筋力アップとかどうでしょう! プールもありますよね? 私、泳ぐの好きです!」

けれど、彼は目線を道路に向けたまま、険しい顔で息をついた。

「睡眠不足と栄養失調の状態で水泳なんて、医師として容認できない」

まさかのドクターストップが出てしまった。しゅんとうなだれ、窓の外の景色を眺める。
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