エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
すっかり忘れていたのは、寝室がひとつだということ。

私と彼は、毎晩、あのベッドで身を寄せ合って眠ることになるのだ。

「さっき一緒に眠ったじゃないか」

あっけらかんと言い放つ彼に、私は首をブルブルと横に振る。

さっきのは処置だ。言ってみれば、医療行為。

精神的な不調で眠れなかった私に、睡眠薬を処方してくれたようなもの。

夜、一緒に床につくのとは全然違う。

「私はこっち側、透佳さんはあっち側、この線から出ちゃダメですよ」

肌掛けを細長く丸めて線を引く。お互い離れてベッドに入ったものの。どうも落ち着かない。

だってどう距離を置いたってベッドはひとつなのだ。彼が動けばベッドは揺れて、私はその度にびくりとしてしまう。

「……眠れないんだろ?」

ピクンと背中が震える。マットが冷たくて足が冷える。どうしてだろう、全然温まらない。

「こんな冷えた身体して、眠れるわけがないじゃないか」

彼が私に足を伸ばしてくる。ほかほかした足が私のふくらはぎに触れて……正直、温かくて気持ちがいいなぁと思った。
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