エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「諦めてこっちに来い。お前はもう俺がいないと眠れない身体なんだよ」

ボーダーラインの肌掛けを剥ぎとって、彼が私の陣地へ侵食してくる。

「きゃっ」

彼の腕が、腰が、脚が、私の身体に絡みつく。その温もりに呼応するように、鼓動がトクトクと震えだし、身体が温まってくる。

「ドライアイスみたいな身体だな。筋肉なさすぎなんじゃないのか?」

私の細い手首をつかみ、肩の方へと撫で上げる。熱がじんわりと、私の薄い皮膚と弱々しい筋肉を越えて、血管の奥に染み込んでくる。

「……あったかい……」

思わず呟いてしまった。心がふうっと軽くなり、強張っていた身体が弛緩した気がした。

「こっち向けよ」

「う……はい」

観念して彼の腕に頭を乗せ、胸の中に顔を埋める。彼が生む力強い鼓動が全身に響いた。

どうやらこの体勢がジャストフィットするみたいだ。1、2、3……という低い声が、私の緊張を解きほぐす。

トントンとリズムを刻んでくれる彼の手のひらが、私を眠りの世界へ誘う。

まるで魔法みたいで……不思議……。

この二週間、寝つきが悪く、眠りも浅かったのに、彼の腕の中にいると自然と眠りにつける。

「まったく。本当にお前は、警戒心ってヤツがまるで足りないよな……」

彼の呟きがぼんやりと頭を掠めていくけれど、その理解が及ぶ前に睡魔に飲み込まれてしまった。
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