エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
その日から彼は私のバイタルチェックを朝晩欠かさず行うようになった。

検温から始まり、手動式の血圧計を使っての血圧、脈拍チェック。

それから、下瞼の裏を見て貧血の度合いをチェック。

良好とは言えないけれど、倒れるほどの深刻な貧血ではないらしい。

先日眩暈でふらついたのは、貧血とは別の原因だそうだ。やはり、脈が乱れたせいだろうか。

彼が当直でいないときは自分で計るようにと自動の血圧計を渡された。

……とはいえ、これだけ彼が気をつけてくれていても、物理的な睡眠不足はどうしようもない。

月曜、火曜、と終えたところで、彼は深刻な顔で切り出した。

「あのなぁ、彩葉」

火曜日の夜。彼はベッドに半身を埋めて、私に向き直った。

「俺がどんなにお前の身体を気遣おうと、その労働習慣を変えてくれない限り、治らない」

そういえば、彼が家を出ていく姿も、帰ってくる姿も、まだ一度も見ていない。

私のほうが早く家を出て、遅く帰ってくるからだ。まさかお医者さんよりも忙しい生活を送っていたとは。
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