エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「……ここまで忙しいのは、今だけだと思います」

終電と土日出勤が続くのは、今だけ。多分。

まぁ、通常業務だったとしても、家に帰って来るのは二十一時過ぎだとは思うけれど、と心の中でつけ足す。

「わかっているよ。彩葉が必死なのも、途中で投げ出したくないと思って頑張っているのも。彩葉が決めたことに口を出すつもりはないし、会社と俺の間で板挟みにするつもりもない。だが、健康を害するとなれば話は別だ」

叱られるだけなら萎縮していたかもしれないけれど、彼が私の手を愛おしそうにさすりながら言うものだから、申し訳ない気持ちが押し寄せてくる。

「健康でさえいてくれるなら、彩葉がどんな仕事を選んでも文句は言わない」

彼が心配するのはよくわかる。私だって、高熱を出しながら出社してきた千葉さんや、倒れるまで働いた権蔵さんのことが心配だったもの。

自分も同じように心配されているのだと深く実感する。
< 99 / 259 >

この作品をシェア

pagetop