君は私の光



「あの日以来だね、梓」


 そう……あの日。
 私が隼翔にフラれた日。
 私は今にもこぼれてきそうな涙を必死に抑えようと、まだ全く咲いていなかった桜の木を見上げていたあの日……。
 そのときに突然、私の腕に当たった紙飛行機……。
 その紙飛行機を飛ばしていたあのときの……。


「佐倉……光……くん……?」


「そう。よく覚えていてくれたね、梓。オレ嬉しいよ」


 ……って、どうでもいいことかもしれないけど……いきなり下の名前で呼び捨て……って……。


「覚えていてくれた……って、佐倉くんも私の名前覚えていてくれたじゃない」


「……光」


「……え……?」


「『光』って読んでよ、梓」


 ……え……。


「……じゃあ……えっと……光……くん……?」


「『くん』はいらないよ」


 ……え……。

 い……いきなりそんなこと……。


「やっぱり会えたね、梓」


 ……え……? やっぱり……?


「……やっぱり……って……?」


「ほら、あの日、オレは梓に『またね』って言ったでしょ」


 あ……確かに。


「……うん……そうだったね……」


「オレも梓と同じ大学だから」


 ……え……⁉


「……そう……なの……?」


 同じ大学……。


「うん、これからよろしくね、梓」


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