君は私の光
「あの日、まだ全く咲いていないあの桜の木のところでオレはスマホを操作していたんだ。スマホを操作している途中でオレはふと顔を上げた。そうしたらオープンキャンパスのときのあの女の子がオレと一緒の空間にいた」
え……オープンキャンパスのときの女の子ってもしかして……。
「梓、君だよ」
……私……そうだったんだ……。
「もちろんそのときは、まだ話したこともないし名前も知らない」
そう、だよね。
「だけどオレと同じ空間にオープンキャンパスのときのあの女の子がいる。オレはどうしてもその女の子と話をしたかったんだ」
光くん……。
「でも、オレはその女の子の顔を知っていても、その女の子はオレの顔を知らない。だから急に話しかけたらただのあやしい人になってしまう」
そっかぁ、光くん、すごく気にしていたんだね。
確かに光くんが気にしてしまうのも、よくわかる。
知らない人がいきなり話しかけたら相手の人はびっくりしてしまうかもしれない。
もっと言えば、相手の人に警戒されてしまうかもしれない。
光くんがそう思っても無理はない。
「じゃあ、その女の子と話すにはどうすればいいのか。オレは考えた」
光くん、一生懸命考えてたんだね。
「でも早く考えなくては。そうじゃないとその女の子が行ってしまうかもしれない」
確かに。
私がいつそこから離れるかわからないから。
「オレは焦りそうになるのを抑えて冷静になって考えた。考えて……あっ、そうだ、紙飛行機……」
紙飛行機……。
「紙飛行機を飛ばしてその女の子の腕あたりに当てればいいんだ。そうすればオレは、その女の子のところに紙飛行機を受け取りに行って話しかけるきっかけになる、そう思ったんだ」
「そうだったんだ……」
だから、紙飛行機……だったんだね……。