君は私の光

「私がいることに全く気付かないなんて……存在が無いのね、私って」


「…………」


　ま……町田さん……。

　突然、町田さんが現れたから、私は驚き過ぎて声が出なかった。


「……なによ、さっきから聞いてれば、まるで痴話げんかじゃない」


　……え……？　ち……痴話げんか……？


「なんだよ瑠佳、そんなところにこそこそ隠れてなくてもいいだろ」


　なっ……なんで光くんはそんなにも冷静なの⁉


「ちょっと何言ってるのよ。あんな……二人の雰囲気で声なんかかけられるわけないじゃない。今だってやっとの思いで声をかけたのよ。本当は声なんかかけるつもりはなかったけど、あまりにも二人がじれったくて。このままだと光たち、いつまで経っても解決しないと思って仕方なく声をかけたのよ」


「そうなのか」


「『そうなのか』じゃないわよ、まったく」


「……それは……悪かったな、瑠佳……」


「なによ、それ何の謝罪？」


「……あ……いや……」


「……まったく……本当に世話がやけるわね。……でも、世話がやけるわりには見せつけてくれちゃって」


　……え……？　見せつける……？


「……あ～あ、なーんか、あほらしくなっちゃった」


　町田さん……。


「……譲ってあげる……」


　……え……？


「あなたに光のこと譲ってあげる」


　……え……？　……ま……町田さん……？


「……でも……」


　……でも……？


「でも私は負けたわけではないから。なんかあほらしいから、あなたに譲ってあげるだけよ」


　……町田さん……。


「じゃあね、お熱いお二人さん、また大学で会いましょ」


　……町田さん……。


「……町田さん‼」