余命一ヶ月の私は、死神に恋をした。
出会い
────もう、疲れた。
このビルに吹く冷たい風が、私の背中を押しているよう。
私が何をしたっていうんだろう。
神様はよっぽど私のことが嫌いらしい。
きっかけは、3年前…
母が家にあるお金や通帳、全てを持って出て行ってから始まった。
世に言う、浮気というやつだ。
父はその何年か前に体を悪くして入院や退院を繰り返していた。
だから私の家は母の給料でなんとか暮らしていた。
といっても家族3人生きていくのがギリギリのところ。
きっと母にも色々な苦悩があったんだろう。
なんで今更言われても許されることではないけれど。
それから程なくして父も亡くなった。
まともな治療も受けられなくなったんだから、当然なんだろう。
私は高校も辞めて働くしかなくなった。
でも手に入る少しの給料は全て生活費に消えていくし、友達だってあっという間にいなくなった。
何のために生きているんだろう。
何を生きがいに働いているんだろうか。
もう十分だろう。
今死んだって誰も責められやしない。
もし神様に会ったら絶対に言ってやる。
何でそんなに私のことが嫌いなのか、って。
そんな皮肉を鼻で笑った。
また冷たい風が吹く。
────その時だった、
私の世界が、変わったのは。
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