余命一ヶ月の私は、死神に恋をした。
…そうだ、どうせもう死ぬんだしこういう死に方でもありなのかもしれない。
それに、この人なかなか綺麗な顔だし、背中に生えてる大きな真っ黒い翼にさえ目を瞑ればかっこいいし。
綺麗な黒髪だし、彼の着ている上下真っ黒な服でも似合ってしまうスタイルの良さ。



「…死ぬ気は?無くなった?」

「いや…」

「はあ!?意味わかんねえ!俺はさ!あんたに死なれたら困るんだよ!」

「困る…?」



困るって、どういうことだ。目の前に立つその人は何か口を滑らせたのか、目を泳がせて「い、いや、違くて…」なんて焦っている。



「…誰なんですか、あなた」

「はあ、まあいいか…俺は死神、あんたの命を貰いに来た」



……は?



「しに、がみ…」

「そう、あのよく映画とかで見る鎌持って真っ黒な悪魔みたいなやつだよ」

「…ふ、ふふふ」

「……何が面白いんだよ?」

「いや現実味のない嘘すぎて、面白いですね。それで本当は?」

「だから死神だって」



少し怒ったようにそう告げる変な人。
死神、命を貰いに来た、とか言ってたよね。
こんなに綺麗な顔なのに、もったいない。こんな風に自分の世界を生きてるなんて。
…今の私には、逆に羨ましい。
< 3 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop