余命一ヶ月の私は、死神に恋をした。
「あなたが私の担当だとしても、命を奪いに来たんだったらわざわざ止めなくたって…」

「んーなんていうかさ、命を奪うってより…命を貰ってんの」

「え?」



死神はさっきまで私が飛び降りようと眺めていた屋上の縁に腰掛けて「難しいなー」と頭をかいた。



「俺らが姿を見せるのは余命があと一週間の人の前だけなの。それでやり残したことがありそうな人に声をかけて残りの一週間を全うして生きてもらう。そうすることで初めて俺らはその人達の余命と同じ一週間を生きることができる」

「…っ、じゃあ今私があなたを見れているってことは」

「そう、って言いたいところだけどお前はちょっと例外でさ。確かに俺の担当だけどお前の余命は、残り一ヶ月」



────その死神の言葉が頭の中で何度も響いた。

死ぬ覚悟なんてとっくに出来ていたはずなのに。だけどいざ、自分の命の期限を耳にしてしまうと膝の震えが止まらなかった。



「この世は全て、運命で決められてる。今日生まれる人や今日死んでいく人、全部だ」

「……」

「俺たちのもう一つの仕事は、その運命を正しく成立させること。だから俺はお前に死なれたら困るんだよ」



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