ただ西野くんが好き。
ーーーどうか山本くんに見られてないように
結城くんに言われた日からそれを考えながら颯と会っております。
颯も山本くんの話をしてこない。山本くんも颯の話をしてこないから、まだ気づかれてないだろう。
定時で仕事が終わって、颯の部屋に行く。
会いたいとメールが来たから、私も会いたいし。
隣が山本くんだから、どうか会わないようにと、足音を立てずに、颯のインターホンを押す。
颯は部屋にいないらしく、出てこない。
ずっと廊下で待つわけにはいかないし、電話してみようと思い颯に電話する。
着信音が鳴ってすぐ電話に出た颯。
「どうした?」
「もう部屋に着いたよ、廊下で待ってるけど、用事あるなら帰るよ?」
「大丈夫、すぐ行くからそこで待ってろ!」
「うん、分かった」
電話を切って颯を待つ。なんか慌ててたみたいだったけどなんかあったのかな、と少し不安になる。
「ここでなにしてんの」
わぁお。制服を着崩した山本くんに、明かに闘った傷跡が顔に残ってる結城くん、コーラを片手部活終わりの瀬崎くんがいた。まさかの3人同時に会うとは……ここにいるのは不自然だよね……颯を待ってるなんて言えない。
「見回りしてただけ」
「じゃなんでずっとここにいんだよ」
「別になんでもないよ、私もうか「美波、待った?」」
……ヤバイ……
なんでこんなにタイミングが良いの……
いや、なんでこんなにタイミングが悪いの……
まさかの4人組勢揃い。
「西野、今美波と言ったよな?」
山本くんのドスの聞いた低い声。颯と違って怖い厚みのある声。もう気付いたよね、?気付いちゃったよね…?
「あぁ、違うの!これは……「俺、七瀬先生と付き合ってる」」
私は大きなため息をつく。
秘密を通し続けることはキツいけど、つい事実をみんなに公にするのも勇気がいる。
結城くんはニヤッとして、瀬崎くんは「え、まじで?」と驚き、山本くんに至っては、口を開けてぽかーんとしている。
「なんで言っちゃうの!?」
「いつかは言わなきゃいけないからね」
「七瀬の好きな奴、西野か」
………いや、もう誤魔化せないです、ハイ。
素直に白状しましょう。
「そうだよ、ごめんね、山本くん」
「なんで奏に謝るんだよ」
「あ……それ……は……」
「俺、七瀬のこと好きで告白した、付き合ってくれとな」
一瞬だけど、颯の眉間が寄ったのが分かった。
嫌なんだろう、黙ってた私に罪悪感が襲う。
颯にも山本くんにも嫌な思いをさせてしまった。
私が言えるのはごめんしかない。
「ちょっと、奏、俺の部屋に来て」
「なんでだよ」
「とぼけんな、話があるんだ」
「山本くんは何も私に悪いことしてないから、黙っていたのは本当ごめん」
「美波は何も心配しないで」
「へ〜美波って呼んでるんだ」
「バカにすな、ここでは誰が聞いてるか分からないから、俺の部屋に来て」
「ちょっといい?俺と宏ちゃんも話聞いていい?たぶん俺全て知ってる」
なんで火に油を注ぐようなことを!!!!
「全部ってなんだよ、」
颯が結城くんをギロッと睨む。
「まぁまぁ、みんな行こう」
唯一穏やかな宏ちゃん、いや、瀬崎くんがみんなをなだめた。