ただ西野くんが好き。
心臓が痛いよ、私。
結局、私含めて5人全員、颯の部屋に入り、2人がけのソファーに私と颯が座り、その隣に山本くんと瀬崎くん。向かいにある1人用のソファーに結城くんがいるという形になってる。
ピリピリした張り詰めた雰囲気。呼吸するのが精一杯。
「で、晴翔、全てってなんだよ」
「その前に、七瀬、言ってもいい?」
この状況で言わないでなんて言えない。ここは結城くんに一任するしかない。
「……いいよ」
「俺、七瀬と颯が付き合ってるの前から知ってた。理由は俺の勘ってやつ、それで偶然見たんだよ、奏が屋上で七瀬に告白してるところ、そして、キスしてるところも」
……結城くんのバカ……!!!!
普段喋らないのに、こういう時に火に油注ぐのやめてくれない??そして相変わらずニヤけるし、悪趣味だよ結城くん。
「奏、お前………」
「好きなんだからいいだろ、そん時は付き合ってること知らなかったし」
「美波もひどいな〜」
「かえ……西野くん本当ごめん」
「俺は諦めたくない」
山本くんは真っ直ぐ颯を見つめる。
「美波は俺の彼女、ずっと変わらないことだ、諦めろ」
山本くんは天井を見つめて大きく息を吐いて、颯を見る。
冷徹であざわってるような目で。
「今でも欲しいもの全部奪うつもりか」
「……何回も言ってるよな、そんなわけないだろって」
「俺はお前が憎たらしいわ」
そう言って、山本くんはドアを乱暴に閉めて出て行った。
そしてしばらくの沈黙。
「俺らは小学生からの幼馴染み」
瀬崎くんが突拍子に私に4人の出会いを説明する。
ずっとスマホをいじってたから話を聞いていないと思ってたけどそんなことなかった。
「颯は有名な外資系企業の『NISHINO WORKS』の社長の一人息子、奏は山本塾の息子で奏はいつも颯のと比べられてきた。でも全て颯の方が秀でていて、あいつは嫉妬しか颯に抱いていなかった。でも中学生の時に颯がいじめられる。原因は俺でもよく分からないけど頭も良く運動神経いい、イケメン、優しいで負の打ちどころがない颯がむかついんだだろう、でもいじめが酷かった。それを一早く助けたのがか奏。奏なら嫉妬で狂いそうなくらい嫌いな颯がいじめられて爽快感を覚えるだろ、ちょっとは嬉しい。って。でもあいつは、いじめるなら俺だけでいいって言って、颯を救って、親のコネでいじめた奴ら全員になんらかの処分が下ったんだ。それで今まで来たのに、、、まさか今でも颯を恨んでるとはね、」
そうだったんだ、颯と山本くんにはこんなことがあったんだ。そりゃ確執を持つのも不思議はない。それでもずっと一緒にいるってことは肩書きだけの友達ではないということだろう。山本くんは颯にどんな感情を持ってるんだろう……
「嫌いだけど好き」??
相反する二つの感情を持ってる、そんな感じな気がする。
「俺は奏のなにも奪ってるつもりないんだけどな」
「それは俺らにも分かるよ、奏も颯の傷を知ってるからずっと一緒にいるんだろ、でも奏にも消えない傷があるんだよ」
「分かってる、俺どうすればいいんだろうね」
「1回殴り合いの喧嘩してみれば、ガチのやつ」
「結城くん、それは……!」
「前にもやったことあるから、最近してなかっただけ」
「殴り合いね……あいつのまじで痛いんだよ、1回、頭針で縫ったことあるし」
ガチすぎる、もう事故レベルじゃん。
「奏の気持ちを全部受け止めて、お前の気持ちも奏に当ててみれば」
「それもいいかもな」
「いや、よくない!話し合いでいいと思うよ、殴り合いなんてしないで」
「俺らは不器用で不真面目だから、殴り合いが1番」
「大丈夫、美波はなにも心配しなくていいし、別れることはないから」