ただ西野くんが好き。






うぅ……頭が痛い。


目を覚ますとなにも見えない暗い部屋にいる。


「ここ………どこ………」


起きようとすると手と足が縛られて動けない。


夜、裕太から口を抑えられたんだ。


そしてここはどこなの……


今は何時…?


颯は今頃私を探してるのかな…?


お願いだから助けに来て……


流れそうになる涙を抑えてじっと待つと、ドアがギギィーーーーと鳴り開いて電気が付く。


そこには裕太がいた。


「やっと起きたんだね」


「ここどこ」


「親父所有の別荘」


そう言えば、裕太の両親は有名な外資系の会社経営してるんだっけ。


こんなにも広い家をお持ちなんですね…


でも息子さんたちは性格が少し曲がってるみたいです。と内心毒突いてみる。


「今何時?」


「午前10時」


え、12時間経ったの……?


「何回か睡眠薬投与したから長く寝たみたい」


「本当最低っ」


「素直に前みたいに俺に惚れて付き合えばよかったんだよ」


「私、人間なの、心があるわけ。好きなものが嫌いになることもあるの。裕太はもう嫌い。」


「………」


裕太はずっと私を見ている。疑いの目、、、憤りを感じてる目だ。



「それに私には颯がいるから、私のこと本当に好きなら邪魔しないで、あと写真も撒かないで」


「フフッ、アハハッッハハハハ!!!」


いきなり笑い出す、もう化け物みたい。


「もう高校に送った。今頃彼氏は校長から呼ばれてるだろう。」


「え……??」


「美波を呼び出したのは確実に彼氏と別れさせて俺にしか向かないようにするためだ」


裕太は頭おかしくなってる。好きな人を傷つけて自分のものにしようとするなんてそんなバカな考えよくできるなぁ……


もう呆れる。


ということより、あの写真が本当に学校に撒かれたなら、颯はどうなる…?私は学校を辞めてもいいけど颯は受験生。どうすればいいんだ……



私が泣きそうになると、


「俺がついてるから」


裕太の指が私の顔に触れてくる。


「触らないで気持ち悪い!」


すぐ裕太の手を振って「誰か助けてぇええ!!」


大きな声を叫ぶ。まずここは脱出するのが1番手。


「俺しかいないし、ここは森に囲まれてるから誰にも聞こえない。」











「なにが誰にも聞こえないって??」


ドアの前には、炎が出てるのが分かるくらい怒ってる颯と、背中が凍りつくくらいに冷たい目を裕太に向けてる山本くん、はぁはぁと息が切れてる結城くんにニヤついてる瀬崎くん。




「なんでここが?」



「それは後にして美波をもらうよ」


「えっ?」


一瞬で瀬崎くんと結城くんが裕太をぶん殴った。


2人も格闘技というか、恐ろしいくらいに身体能力が高いんだな…


山本くんは裕太を縄で縛り、颯は私を抱きしめた。


強く、息が苦しいくらいに。



「ごめんな……」


「ううん、来てくれてありがとう…どうして分かったの?」


「それはこいつをやっつけてから話す」


「おい、クズ横山さん、いや、横山」


颯が縄で縛られ頬も切られ口から血が出てる裕太を見る。


「まずな、俺がここが分かったのは、美波が消えてすぐお前の仕業だと分かったんだよ、それで探してたら公園に美波のハンカチが落ちてた。そこから晴翔に防犯カメラを確認してもらってここが分かったわけ、わざと遠い場所に連れてくるなんて、意地悪な嫌な奴」



そういえば意識がなくなる前にハンカチを落としたんだった。颯なら気づいてくれると思った。



「写真はとっくに処理したし、もうすぐ警察も来て監禁罪で逮捕されるだろう、公園のカメラ映像が証拠だ。なにが建築家だ馬鹿か、一生監獄に入ってろ、前みたいに書類送検にはさせねえ」



「前ってなんだよ…?」


「お前の弟、寛太からいじめられた西野颯だよ、俺は。まぁ覚えてなくてもいいけど、折角の機会だし、仕返ししておく」



颯は裕太を思いっきり殴った。


もう目が腫れて見るのが辛い。


「2度と美波に近づくな、命令だ」


そうして、裕太は逮捕されて私は救われた。
< 21 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop