ただ西野くんが好き。
「ここ座って」
「あ、うん」
最近部屋の模様替えでもしたろだろうか、ソファーが大きいの1個で1人用の椅子がなくなってる。
ソファーに座ると、颯は冷蔵庫を無造作に開けて、お茶をガブガブと一気飲みした。
そして、私の隣に座った。
颯はじっとガラステーブルを見つめながらなにかを考えてる。
そして私はガラステーブルに映っている颯を見る。
二重がかっこいいな…なんて思っていたら、
「俺、余裕ない」
「…え?」
いきなり発せられた言葉はボソッと低い声だったけどはっきりと私に届いた。
「美波は教師で俺は生徒。バレちゃいけないから俺も気持ち抑えるけど、それだと美波がどこかにいきそう、松本から告白されたんだろ?」
「うん…でも断ったよ」
「美波…」
そう言って颯は私の目を見た。
約15秒くらい。私も逸らさないで颯の目を見た。
「俺だけを見て、俺から逃げないで、家族みたいに裏切らないで…美波を取られたくない……」
目は強かった。でも声はか弱かった。
いつもストレートに愛を伝えて、私を守ってくれる強い颯だと思っていたけれど、
心は過去の傷に囚われてる颯と未来に向かって出来るだけ強く進もうとする颯。
一生懸命戦ってる。一生懸命私のために頑張ってる。
私は颯になにもしてやれてない気がする。
颯のこと好きなのに、大好きなのに、颯を不安にさせて優柔不断で迷惑ばっかりかけてる。
こんな私でもいいのか…と思うけど、我がままな私。
颯の隣にいたいし、颯にも私から逃げて欲しくない。
私は教師。彼は生徒。来年の卒業までは制限も多いだろう。でも私なりに最大限の愛し方で颯を愛したい。優しく、時にはきつく颯を包み込んであげよう。
「颯、私は逃げないよ、ずっと颯のそばにいるからね、安心して」
私は颯を抱きしめた。
強く頭をくしゃっとしながら、力強く抱きしめた。
「美波をずっと信じるよ、愛してる」
ーーーそうして、松本先生のキスなんか忘れるくらい深く深く溺れるくらい、呼吸困難になるくらいのキスをした。