ただ西野くんが好き。




「キャーーー!!!」
「なにあれ、王子様!」
「颯くんに奏くんだ!」
「晴翔は、晴翔??」
「あれ、宏介じゃん!足速いしカッコいいし付き合いたい〜!」



まだ9時だよ。高校生や大人の方、小さい子供達、たくさんの人が来てくれて、嬉しいけど、3-3は異様風景。


サインして!


とか、


写真撮ってください!


とか、


西野くん、モテすぎ。


これは私が嫉妬しそう。いや、もうしてる。


タキシード姿カッコいい!!!


いつもは口調が冷たくてドライだと思われてるけど、心は今熱い。もしかしたら顔も赤いかもしれない。


それぐらいカッコいい。


私だけが見ていたいな〜なんて思っちゃう。


クレープ買う人より西野くんや山本くん、


いや、派手髪4人組に会いに来てる人の方が多い。


このまま見てるのは辛いから、出店巡りでもしようとしたら、


「七瀬せんせ、クレープ食べます?」


いきなり西野くんが話しかけて来た。


あなたの仕事はクレープじゃなくて接客じゃない?と思ったけど、朝ご飯を食べてないから1つ頂こうかな、それに西野くんと話せるし一石二鳥!!


「うん、食べようかな」


「なに食べる?」


「うーん、チョコバナナにホイップつけて欲しい」


「甘党なんだね」


「うん」


知ってるくせに。でも微笑ましいしキュンとする。


「はい、どうぞ」


「ありがとう、西野くん、お客さんみんな待ってるよ行ってあげて?」


本当は行って欲しくないけど、仕方がない。


西野くんは私の耳許で呟いた。


「ずっと美波のそばにいたい。」


絶対顔真っ赤になってる。100度超えてるんじゃないかってくらいに顔が熱い。



西野くんはそう言って、接客をした。


私はクレープを食べながら、出店巡りを始めた。


男メイド喫茶からお化け屋敷、モーリーを探せ!とか宝石箱探し、いろんな凝った企画があって楽しい。


どんどん人も多くなって、職員室に戻る。


「あの」


「なんですか?」


話しかけて来た男の子。


「もしかして美波先生?」


「なんで私の名前を…?」


「西野颯の弟だから」


ま、じ、か、まじか。


ここで弟くんに会うとは、あまり弟の話はしないからよく知らないけど会いに来たということは仲良いのかな?それになんで私の名前を知っているんだ??



「弟くん、なんだ、西野くんなら3-3にいるよ」


「颯よりも先生に会いに来た、颯の彼女さん」


「ちょっとおおお!!!」


「うぅ!くる……」


思いっきり弟くんの口を塞いでしまった。


「あ!ごめん」


「俺が悪いから、てかさ、静かな場所ない?美波先生と話したいな〜」


「う、うん、まぁいいけど」


連れて来たのは屋上。


屋上しかない。


「ここなら誰も来ないよ、鍵は私が持ってるから」


「美波先生、俺から颯の話聞きたいと思ってる?」


「え?」


「だってわざわざ鍵かけるから」


「いや、そういう訳ではないよ」


本当にそういう訳ではない。だけど『颯の弟くん』だからか、なんか気になるし話したくなったのは事実。


「へ〜寂しいな」


弟くんは颯に似てない。性格も弟くんの方がフレンドリーかな、でも颯とは違うタイプのイケメンくん。


「弟くんは私に話したいことあるよね?だから呼んだよね?」


「うん、まぁそうなんだけどね」


弟くんは、少し悩んだ顔をして、


「颯を全て受け止めてよ」


「…え?」


唐突すぎてうまく反応できなかった。


「俺らの家族のことは知ってるでしょ?」


「うん」


「確かに颯は両親から見捨てられたのと同じだと思う。でも俺ら兄弟は仲良いんだぜ、美波先生の話も毎週聞いてるし」


「そうなんだ」


兄弟の話あんまり聞かないし、家族の話を聞いてむしろ仲悪いと思っていた。


「颯は俺らをずっと愛してくれた。でも颯はずっと孤独だった……」


「俺らにも泣く所見せないし、小さい時から誰にも颯の隣にいた大人は居なかったからな、1人で頑張ってきたんだ、あいつは。でも心では誰かに頼りたいって思ってる。だから美波先生、よろしくね、颯、あんなにモテるけど誰にも付き合ったことないんだよ」


「そうなの!?」


彼女1人2人はいると思ってた。


「意外だろ?美波先生が初彼女。颯は人間不信な部分あるから、でも美波先生が好きになったってのはなんか惹かれる部分があったんだよ。それで俺に相談された時言ってやったよ」



「……なんて…?」


「とことんアタックしてみろ、強くいけば振り向いてもらえるって、で、どうだった?颯は結構ぐいぐいいってた?」


思い出される4ヶ月前のキャンプ場でのこと。


私の部屋に入ったり、そもそもその前に颯の部屋でめっちゃ近かったし……


あれは恋愛経験者だと思った。キスの仕方もその先も……


まさかの初めてだとは、習得が早いよ颯くん。


それに私のために少しは男らしいところを見せてくれたんだなと思うと少し嬉しくなる。


「美波先生?聞いてる?」


「あ、あ、ああ、うん」


完全に過去を思い出してた。


「西野くん、積極的だったよ」


「よかった、俺の言うこと聞いてくれたんだ」


「うん、それと、弟くん、私は全て受け止めるよ、私は颯から離れない、そう約束したの」


「いい彼女さんで俺安心!てか、俺の名前言ってないね、俺は斗真(とうま)、で俺の弟が龍真(りゅうま)だからよろしくね?」


2度目のよろしく、もちろん


「よろしくね、斗真くん」


「颯、今何してる?」


「教室でクレープ作ってる、いや、接客かな?」


「颯目的で来てる女子多そうだもんな〜」


「……正解」


「もう午前中終わるけど、颯に会えない?」


「そうだね、西野くんは午前中で終わるはずだから、会えるよ、あ!一緒に教室行こうか?」
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