ただ西野くんが好き。
目覚まし時計の音で目が覚める。
今は8:47
今日は西野くんが私の家にくる。
キャンプが終わって心も体も疲れていたから休みたかったけど、どうしても会いたいと言うので、私の家に連れてくることにした。
今日は振替休日で3年生だけ休みの日。
私が寮に行くと怪しまれる可能性がある。それに青藍高校の寮はそんなに厳しくはなく、平日は夜9時が門限、休日は夜10時門限。それだけしかルールはない。
だから、自由に私の家に来れるってわけ。
少し家を掃除して着替えて待ってよう。
あっという間の11時
インターホンが鳴り、ドアを開けると黒い帽子を被った西野くんがいた。
「待った先生?」
「ううん」
「じゃ入る」
西野くんはソファーに座って、私はお茶を出す。
「ありがと」
全身黒コーデの西野くんは高校生に見えない。
大人っぽく見える。てか、芸能人オーラみたいなものを感じる。
「昼ごはん作るからまってて、まだ食べてないよね?」
「美波、ありがと」
……美波……??
「その呼び方恥ずかしいから」
「彼氏なんだからいいじゃん、それに今は俺の彼女なんだから」
それはそうだ、プライベートで「先生」と呼ばれる方がおかしい。
「分かった、でも学校ではやめてね」
「それくらい分かってる、美波は俺をなんて呼ぶの?」
「西野くんでいいや」
「え、それはダメ」
「なんで」
「堅苦しいから、颯って呼んで」
「………分かった」
「じゃ、今呼んで」
「え……?」
男性を上の名前で呼び捨てで呼ぶのは彼氏なら抵抗なく出来るはずなのに、なんか西野くんだと恥ずかしい。(ほら、今も西野くんって言っちゃった)
でも、付き合ってるんだし、言わないとね、慣れなきゃ。
「はや………て……」
「聞こえなかった、もう一回」
そのにやけてる顔は絶対聞こえてる。もう意地悪。
「颯」
「よく出来ました」
颯は立ってキッチンにいる私のところに来て深い深いキスをした。
呼吸が荒くなるくらいまで深く、激しく。
「俺、昼いらない、美波を食べる」
「えぇ!?!?」
颯は私をひょいと持ち上げて、私は寝室のベッドの上にいる。
「このままいっていい?」
「断ってもやるよね?」
「そうだね、美波ちゃんは俺のものだから愛おしいくらいにいじめてあげる」
「うぅ……」
また激しいキス。なにも考えることができない、口を動かすのがやっと。
颯は服を脱がせて、首筋から下に向かう。
激しく私をいじめる颯。でも颯は私の反応を見て楽しんでる。
「颯……もうダ……メッ……アァ……ヤバイ……」
「美波ちゃん、可愛い」
体全体にキスをする颯。もうなにも考えられないくらいに私は感じている…
ーーーーその感覚が落ち着いた時には、颯は寝ていた。
颯も私がやったことに感じてくれたみたい。
最終的には2人共果てたけど。
もう時間はお昼過ぎ、なにも食べてない私はお腹が空いたから、服を着てご飯を作る、それまで颯は寝かせておこう。
「颯、起きて、昼ごはんできたよ」
何度揺すっても起きない、寝起きが悪いのかもしれない。
「はやてー、起きて」
頭をくしゃくしゃにして、大音量の音楽を出しても起きない。これは相当な寝起き悪い人だ……
こうなったら、布団をひっぺがして
「西野!!!!!起きろ!!!」
なかなか出さない、私の怒鳴り声のような口調で彼氏を起こす。
あまり聞かせたくないけど、仕方がない。
颯はすぐ起きて、「今の声美波の……?」
そりゃ驚くに決まってる。自分でもなんでこんな声が出るか分からない。両親は全く怒らないのに。
遺伝子じゃなければなんだろう…?
今更考えても仕方がない。
颯は、私が着替えてご飯食べよと言ったら素直に従っている。
料理が趣味な私には、パエリアとスペアリブと、ブラウニーを作った。
颯は喜んで全部食べてくれた。
ついでに冷蔵庫にある私のアイスまで。
お腹いっぱいになったところで2人のこれからを話す。
「これから」というのは、付き合い方みたいなもの。颯は男子寮だし簡単に会えるわけではない。それに大前提として生徒と教師、気にしないとはいえ、そのラインを超えていることを知られたらそれなりの打撃は颯にも私にも来る。バレるよりはバレない方がいい。そのために颯と向かい合わせで座って話している。
とは言っても、颯は次はあんみつを食べている。
和菓子が食べたくなってデパ地下で買ったあんみつなのに。
それだけで駄々こねるのも子供っぽい。そこは気にしないで話に戻そう。
「颯は部活してないから、土日に私の家に来たら?」
「えっ、平日は?」
「私にも仕事があるから無理かな、それに夜遅くまで教師が男子寮にいるのはマズいよ」
「えーでも、2日間だけってのは寂しい」
「でも、仕事があるから時間は取れそうにないね?どーーーーしても会いたくなったらメールして」
「分かった、毎日メー「毎日はダメ!」」
「毎日はダメだからね!」
強く念押しをして、4個目のあんみつを食べようとしていた颯の左手を止めさせて、初デートは終わった。