君が忘れた先でまた出会う
6
《アイラ》
「……ただいま」
私は古びたドアを力強く開ける。
その反動で、ドアがバタンッと大きな音をたてて閉まる。
壊れるから静かに閉めないといけないんだけど……。
感情が抑えられなかった。
「おかえり、アイラ。ご飯もうすぐできるから」
玄関のすぐ横にある小さな台所から声が聞こえる。
……蓮だ。
「食べたくない」
学校の「アイラ」からは想像もつかないような冷たい声。
ただただ感情のままに話す言葉。
もちろん、笑顔なんてない。
……これが本当の私よ。
「まーだ今日のこと引きずってるのか?」
「うるさいっ、黙ってよ」
「はいはいー、とりあえずご飯は食えよ」
蓮は机の上に夕飯を並べていく。
今日は、私の好きなハンバーグだ。
……食べるしかない。
私は静かに椅子に座る。
小さな机には美味しそうな料理が勢揃い。
やっぱり、蓮はすごいな。
蓮は私の目の前に座る。
いつも通りの二人だけの食事。
「いただきまーす!」
「いただきます……」
食欲はなかったけど、蓮の料理は美味しいからどんどん箸がすすむ。
安心する味だな。
私の母親の味は、多分蓮の料理なんだろうな。
「どう?」
「ふつう……」
私は冷たく言う。
ウソ……本当はすごく美味しい。
だけど、素直にそう言う気分じゃない。
……私はこの家ではわがままだ。