みずあめびより
しばらくすると新貝の腕の力が弱まった。

「ごめん・・・なさい。抱きしめたら、なんか気持ち止められなくなっちゃって。」

「・・・。」

シュンとした子犬のような顔で謝られ、彼を責める気にはなれなかった。

「ていうか、キスされそうになったことまでバカ正直に話さなくていいのに。」

彼は柔らかな声で言った。

「バカ正直に話さなくてもって・・・転職活動の面接でも言われました。」

「はは・・・彩木さんらしい。あ~後悔・・・なんでバーベキュー開催するまで行動に出なかったんだろう。もっと早くアプローチすれば良かったのに。俺らしくもない。そうしたら葉吉さんより俺のこと好きになってもらえたはず。仕事では葉吉さんに敵わないけど・・・絶対俺の方が好きな自信ある。」

「新貝さん・・・。」

───私なんかのこと、そんな風に・・・。

なんだか泣きそうになる。

「なんか彩木さん見てて、いきなり二人より、最初は何人かで遊んだ方が良さそうって思ったんだよなぁ。その後も相当気持ちセーブしてアプローチしたし。」

「・・・私のこと、考えてくれたんですね。」

「好きだから。本気で。」
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