みずあめびより
少ししてお風呂が沸いたと電子的な声が告げる。

「先に入れよ。」

「え、でも・・・。」

「衣緒の家で風呂借りることあったら俺が先に入らせてもらうから。な?」

「はい、ありがとうございます・・・。あの。」

「ん?」

「お土産で時間が経つと色と香りが変わる入浴剤買ったんですけど、入れてもいいですか?」

「もちろん。そんなのあったんだ。最初どんな感じか見とこ。」

二人で浴室に入る。

「入れますね。」

粉がサラサラとお湯に溶けていく。かき混ぜ棒で混ぜると淡いブルーで柑橘系の香りがする。

「これがどうなるんだろうな。黒とかにはなんないだろうけど・・・。」

「楽しみですね。」

「・・・じゃあ、ゆっくり入れよ。今日はちゃんとドライヤーしてから部屋に来いよな。」

「はい。」

鈴太郎に髪をくしゃくしゃされ、衣緒はくすぐったい気持ちになった。



お風呂を上がりドライヤーを終えて部屋に戻ると照明が落とされ、キャンドルが灯っていた。

「衣緒がすっぴん気にするかと思って。そのうち気にならなくなると思うけど。」

───思いのほか部屋がムーディーな雰囲気になっちゃったけど。

「・・・ありがとうございます。キャンドル綺麗・・・。」

「LEDのやつばっかりだけどな。」

「あ、これ100均のやつ、うちにもあります。ふふ、またお揃い。」

嬉しそうに微笑むと、鈴太郎がすぐ隣まで来た。

「・・・入浴剤、色変わった?」

「緑っぽくなってきましたよ。香りは・・・!?」

話している途中で彼は衣緒の首に顔を(うず)めた。

「・・・さすがにもう香りわからないか・・・。」

「・・・え、えっと、森林っぽい香りです・・・。」

彼に触れられている部分も心も熱くなる。
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