みずあめびより
「その・・・誰よりも俺のこと幸せにしてくれてるだろ。」

鈴太郎は照れ過ぎてもはや怒ったように言う。

「!!!」

その言葉に衣緒は慌てて鼻をおさえた。

「なんで鼻・・・。」

「鼻血出そうで・・・。」

「いいよ出して。拭くから。」

「いやですよ!恥ずかしい。」

「ぷっ・・・。」

「また笑われた・・・けど。」

「けど?」

「・・・笑った顔、大好きだから、笑われて嬉しいです。」

鈴太郎の顔をじっと見て言うと、彼は頬を真っ赤に染めてうろたえた。

「・・・な、見るなよ・・・。『大好き』は反則・・・。」

「照れた顔も『大好き』ですよ?」

衣緒は嬉しそうに彼を見つめ続ける。

「・・・衣緒ってそう見えて意外にSなのか・・・?」

「!?え、えす!?そんなことないですよ・・・。」

「じゃあ、やっぱりM・・・?」

「わ、わからないです。時と場合と相手によるかと。・・・葉吉さんはどうなんですか?」

「・・・俺もそうかも。」

「・・・ですよね。」

「・・・うん。」

二人とも照れて床を見つめていたが、衣緒が先に顔を上げて口を開いた。

「・・・ありがとうございます。」

「何が?」

「私が葉吉さんのこと幸せに出来ているのなら何より嬉しいから。もっともっと幸せに出来るように頑張ります。」

「いや、俺もう充分幸せだから。」

昼下がりのリビングに柔らかい空気が流れていた。
< 155 / 253 >

この作品をシェア

pagetop