みずあめびより
家に着いて廊下を歩きながら鈴太郎が衣緒を振り返る。

「あ、服洗濯する?」

「・・・はい。洗濯機お借りしても・・・。」

「使えよ。洗濯ネットも新しいやつあるから。」


洗面所に行くと、洗濯かごには洗濯物が入っていた。

「あの、これも一緒に洗います?」

「あ、俺のは・・・溜まってからで・・・。」

「あ・・・すみません。私のと一緒に洗うのは嫌ですよね。」

「いや、俺はいいけど・・・いいのか?」

「はい。」


二人分の洗濯物を洗濯機に入れていると、奥にある別の洗濯かごに着用済みと思われるシャツが数枚、簡単にたたんで積まれていた。

「あの、これは別に洗うんですか?」

「あ・・・アイロン苦手で・・・クリーニングに出してるんだ。」

鈴太郎は少し恥ずかしそうに言った。

「あの・・・もしよかったら私、アイロンかけましょうか?クリーニングほどの仕上がりにはならないけど・・・。」

───会社ではクール&パーフェクトって言われてるのに、朝が苦手で、アイロンも苦手・・・。なんかかわいい・・・。葉吉さんのこと知れるの嬉しいな。

「・・・いいのか?一応、アイロンする時にスプレーするやつはあるんだけど。」

「アイロンがけ好きなので是非やらせてください。」

「あ、ああ、頼む・・・。」

にこにこして嬉しそうに言う彼女の笑顔が眩しくて、鈴太郎はうつむいた。
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