みずあめびより
衣緒の顔が見たくなり、薄く開けた鈴太郎の目にマンションのエントランスから出て歩いてくる安西の姿が映った。

「!!!」

「?・・・!!!」

急に離れた彼の様子を見て衣緒も彼女に気づき後部座席を見る。

「あ、あの、お土産。」

「あ、ああ、渡さなきゃな・・・。」

二人共熱いキスの余韻が残り名残惜しい思いを抱えたまま車を降り、鈴太郎が安西に声をかける。

「安西さん。」

「おお~。デート?」

「ああ。」

「こ、こんばんは・・・。」

衣緒は挨拶をしながら、にっこりと羨ましそうに微笑む安西の表情に少し焦った。

───み、見られてないよね。いや、こんなこところであんなことしてる私達が悪いんだけど・・・。

「これ、チケットのお礼。」

鈴太郎がお土産を渡す。

「え~気遣わなくてよかったのに。あ、これお菓子?今から友達の家集まるとこだから持ってくわ。皆喜ぶ!ありがとね。」

「宇宙展見応えあってすごく楽しかったです。ありがとうございました。」

礼を言う衣緒に安西が笑顔を向ける。

「楽しんでもらえてよかったよ。二人はもう一緒に住んでんの?」

「い、いや・・・。」

───俺はそうしたいけど。

「だよね。リンタロウの部屋もうちと同じ間取りでしょ?二人で住めなくはないけど、せっかくならもう少し広いとこがいいよね。ベッドだってダブル置きたいしね。」

「は、はは・・・。」

───ベッドって ・・・。

苦笑を返すと、隣の衣緒からも動揺が見てとれた。
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