みずあめびより
「・・・さっきあんな可愛いキスされて、そんなこと言われたらさ・・・木曜からの俺の努力が・・・。」

「え?」

「・・・だから、ホテルから何泊も一緒でもっと触れたいのずっと耐えて・・・俺、今なら悟り開けそう。」

鈴太郎が心底苦しげな声と表情で言うので、衣緒は申し訳ない気持ちになってしまう。それと同時に彼の自分に対する想いの大きさを感じて、胸がキュンとなった。

「・・・よかったら、どうぞ・・・。」

衣緒は恥ずかしくて目を逸らしながら小さな声でつぶやいた。

「・・・な、そんな、会社でお菓子配る時みたいに・・・。」

鈴太郎はその言葉の意味を理解して驚き、じっと彼女を見つめてしまう。

「み、見ないで・・・。」

衣緒は両手で顔を隠すが、その手を鈴太郎に掴まれソファに優しく置かれる。なおも彼から目線を逸らそうとあがいてみるが、気がつけば彼の顔が今にも触れそうな位置にあった。

「ありがとう、いただきます。」

鈴太郎は会社で配られたお菓子をもらう時のように言うと衣緒の唇に自分の唇をそっと重ねた。
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