みずあめびより
「・・・あの。」
「おぉっ!?」
洗面所の鏡に、にやにやしている自分の顔が映っていたが、その後ろからいつのまにか衣緒が顔を出していて、鏡ごしに目が合う。ドライヤーの音で足音が聞こえなかったようだ。
「サンドイッチ、カバンに入れておきますね。葉吉さん今日ミーティングと外出詰まってるから、サッと食べれるものが良いかと思ったので。」
彼女はカバンが置いてある玄関に向かう途中で洗面所に寄ったようだった。
「・・・衣緒、何回も言ってるけど、弁当無理して作らなくていいからな。朝食も作ってくれて・・・すげえ嬉しいけどさ・・・正社員になって忙しいだろ。」
例の出張の後、彼女はマネージャーの泉に呼び出され、正社員になってほしいと打診を受けたのだった。鈴太郎は出張前に予め聞いていたことだった。
「私も皆も彩木さんがいないと困るから。」
同席した鈴太郎は泉の言葉を聞いて喜びの涙を流す彼女を抱きしめたい衝動を必死で抑えたのだった。
「大丈夫ですよ。仕事内容も変わってないですし、引っ越して会社も随分近くなりましたし。私、朝ごはん食べないと駄目な人なんです。お弁当は毎日作ってるわけではないし、生協の宅配の冷食とかミールキットも使ってるし、平日の夕飯は基本作ってないですし。」
夜は二人とも帰りが遅いので、オフィスで買ってきたものを食べたり外食したりすることがほとんどだった。
『大丈夫』という言葉に鈴太郎が反応したので強調しておくことにする。
「この『大丈夫』は本当の『大丈夫』ですから・・・葉吉さん朝イチで内部ミーティングですよね?急がないと。」
「そうだった!」
玄関で靴を履くとどちらからともなく抱き合ってキスをする。
二人で車に乗り込み、会社の手前で衣緒が降りる。朝は基本的に一緒に車で通勤し、時間差で出勤、帰りは時間が合うとは限らないので衣緒はバスを利用していた。
住所変更を報告するに当たり、マネージャーの泉や人事担当には二人で暮らすことを伝えざるを得なかったが、彼らには強く口止めし、他の社員──新貝と玉川以外──には二人の関係は秘密だった。
玉川には新貝との間にあったこと、鈴太郎と付き合うことになったこと、全てを報告していた。
「おぉっ!?」
洗面所の鏡に、にやにやしている自分の顔が映っていたが、その後ろからいつのまにか衣緒が顔を出していて、鏡ごしに目が合う。ドライヤーの音で足音が聞こえなかったようだ。
「サンドイッチ、カバンに入れておきますね。葉吉さん今日ミーティングと外出詰まってるから、サッと食べれるものが良いかと思ったので。」
彼女はカバンが置いてある玄関に向かう途中で洗面所に寄ったようだった。
「・・・衣緒、何回も言ってるけど、弁当無理して作らなくていいからな。朝食も作ってくれて・・・すげえ嬉しいけどさ・・・正社員になって忙しいだろ。」
例の出張の後、彼女はマネージャーの泉に呼び出され、正社員になってほしいと打診を受けたのだった。鈴太郎は出張前に予め聞いていたことだった。
「私も皆も彩木さんがいないと困るから。」
同席した鈴太郎は泉の言葉を聞いて喜びの涙を流す彼女を抱きしめたい衝動を必死で抑えたのだった。
「大丈夫ですよ。仕事内容も変わってないですし、引っ越して会社も随分近くなりましたし。私、朝ごはん食べないと駄目な人なんです。お弁当は毎日作ってるわけではないし、生協の宅配の冷食とかミールキットも使ってるし、平日の夕飯は基本作ってないですし。」
夜は二人とも帰りが遅いので、オフィスで買ってきたものを食べたり外食したりすることがほとんどだった。
『大丈夫』という言葉に鈴太郎が反応したので強調しておくことにする。
「この『大丈夫』は本当の『大丈夫』ですから・・・葉吉さん朝イチで内部ミーティングですよね?急がないと。」
「そうだった!」
玄関で靴を履くとどちらからともなく抱き合ってキスをする。
二人で車に乗り込み、会社の手前で衣緒が降りる。朝は基本的に一緒に車で通勤し、時間差で出勤、帰りは時間が合うとは限らないので衣緒はバスを利用していた。
住所変更を報告するに当たり、マネージャーの泉や人事担当には二人で暮らすことを伝えざるを得なかったが、彼らには強く口止めし、他の社員──新貝と玉川以外──には二人の関係は秘密だった。
玉川には新貝との間にあったこと、鈴太郎と付き合うことになったこと、全てを報告していた。