みずあめびより
「実は昨日、北岡は誘われてなかったんだ。一昨日三坂さんから、『打ち合わせがてら飲みませんか?』って電話来た時、北岡には別に連絡してあるらしく『北岡さんは外出先から直接お店にいらっしゃるっておっしゃってましたよ。』って言ってたんだ。あいつ2日間ずっと外出だったから、顔合わさなかったし飲みについて話すこともなくて・・・。」

「・・・。」

───やっぱり・・・二人きりで・・・。

テーブルの下で両手を握りしめると、心までぎゅっと縮こまったように感じた。

「待ち合わせ場所に行って北岡は誘ってないこと聞いて、『どういうことですか?』って聞いたら、俺と一緒に行きたいところがあるからって・・・。」

『自分しか誘われてないとわかると警戒されると思って。北岡さん外出多くて特に今週はほとんど社内にいないとはおっしゃってたけど、こんなにうまくいくとは思わなかった。』

鈴太郎は、驚きつつも楽しそうに笑いながらそう話していた三坂の言葉の内容を衣緒に話す。

「・・・。」

衣緒は胸がズキッと痛むのを感じた。

「『行きたいところって・・・仕事ですよね?』そう聞こうとしたら、いきなり後ろから誰かに押されて近くに停まっていた車に押し込まれて・・・。」

「えええ!?!?!?」

───二人で飲みに行ったんじゃないの!?

衝撃の展開に今度は背筋がゾクッとなった。

「後部座席に座らされて、三坂さんは助手席に座って、俺の隣に男が乗ってきた・・・。」
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