みずあめびより
「飲み会、北岡さんと一緒って言ってたけど、昨日の夜北岡さん会社にいらしたし・・・。」

その言葉を聞いて鈴太郎は血相を変えた。

「あいつ、会社にいたのか!?予定表、『直帰』ってなってたけど!?」

社員それぞれの予定はホワイトボードに示されていた。

「北岡さん、一昨日直帰でしたよね。多分そのままにして直し忘れたんじゃないでしょうか?前もそういうことありました。」

「まったくあいつは・・・てことは衣緒は、俺が俺に気のある三坂さんと二人で飲みに行って帰って来なかったと思って・・・!?」

「無事ならもうそれでもいいと思いました・・・でも無事ってわかったら正直、その・・・モヤモヤっていうか苦しくて・・・。」

「だあーっ!!!」

衣緒は俯きかけたが、鈴太郎がいきなり大きな声を上げてテーブルに突っ伏したので驚いて顔を上げた。

「き、聞こえちゃいますよ!?」

「ごめん。」

彼は突っ伏したまま言い、顔を上げて彼女と目を合わせるともう一度言う。

「ごめん。」

衣緒は鈴太郎から目を逸らした。

「・・・今回は同じ大学出身者の集まりになっちゃったけど、三坂さんは本当は二人で飲みたかったんじゃないですか?・・・葉吉さんも・・・。」

抑えていた感情が溢れ拗ねたように言うと、ガバッと抱きしめられる。

「そんなわけねぇだろ!!」

「だからここでこういうことしちゃ駄目です!声も大き・・・。」

「あのな、さっき言わなかったけど、衣緒は全然駄目なんかじゃない。そういうこと言うのいい加減やめろ。俺、彼女いないって言った後、『もっともっと大切な人はいます』って言ったんだよ。」
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